お世話になっております。
S.Gです。
料理好きなら一度は目にしたことがあるであろう”例の”鉄製フライパンについてです。
私は何も料理が出来ない設定になっていますので、家でこのフライパンを使用する時は家族が不在時のみ、メインはアウトドア環境で使用しています。
当然、焚火に突っ込んだり荒い使用をしているので、人が多くなるキャンプハイシーズン=個人的キャンプオフシーズンの今、メンテナンス作業を行うついでに書いています。
さて、このフライパンですが、ドイツ・ヴェストファーレン地方で創業した鍛造フライパンの老舗によって製造されているものです。
現在も機械成型に頼らず、熟練工が1枚の鋼板から加熱・叩き・成形する「鍛造製法」で一つ一つ打ち出された無骨で美しいデザインが特徴です。
構造と素材特性について少し語りますと、
■ 一体成型構造(鍛造法)
取っ手と本体が完全に一体化した構造をしています。
これは鉄の地金を約1000℃で加熱し、金床の上で打ち出すことによって形成されます。
この構造により、
・接合部の劣化や緩みが発生せず、全体に熱が均等に伝わります。また、衝撃や長期使用にも耐える剛性を持ちます。
■ 素材:無垢の鍛造鉄(炭素鋼)
中、高炭素鋼(約0.4~0.6%の炭素含有)を使用しています。
鋼鉄の中でも粘りと硬さのバランスが良く、高温下でも歪みや変形に強いのが特長です。
鉄素材ならではの以下の利点が、調理に活かされます。
・熱伝導率が約80 W/m・K で、銅やアルミには劣りますが、蓄熱性能に優れています。
・表面温度の安定性が高く、焼きムラが起きにくいです。また、強火での焼き付けに耐えることが出来ます。
・金属内部の格子欠陥が減少し、応力分布が均一化されることにより、破断強度や疲労限度が向上する為、変形や亀裂を起こしにくいという特性を持ちます。
■ 調理性能:鉄の「蓄熱」と「焼き締め効果」
このフライパンの真骨頂は、何と言っても「焼き物における熱安定性」です。
特に以下のような調理で真価を発揮します。
・ステーキやハンバーグなど、高温短時間で焼き目を付ける料理
・チャーハン、餃子など、水分と油のコントロールが求められる料理
・フリッターや天ぷらなど、油温管理が重要な揚げ物
熱が冷めにくいため、食材を置いた瞬間の温度低下が少なく、メイラード反応(アミノ酸と糖の化学反応)を最適に引き出せます。
これはステンレスやアルミでは得られにくい、鉄ならではの調理効果だと思っています。
少し欲しくなってきませんか?
続いて今回の作業である、メンテナンスです。
■ シーズニング(焼き慣らし)の目的と化学
シーズニングの目的は、鉄表面に高温で油を分解・重合させ、ポリマー化した“油膜”を形成することです。
これは、テフロンやセラミックコーティングのような化学的な被膜ではなく、”炭化油”という自然形成された物理膜であるため、使い込むほどに強くなります。
作業時に使用する油は乾性油(亜麻仁油やグレープシードオイル等)が適していますが、家庭では入手性と煙点のバランスからキャノーラ油や米油が現実的です。
私は”通”な感じがするので、以前はオリーブオイルを使っていましたが、ベトベトになり、いやな酸化の進み方をする為、今は米油を使用しています。
■ 使用後のひと手間と再生方法
鉄は空気中の水分と酸素によって容易に酸化(Fe→Fe²⁺→ Fe³⁺)しますが、これを防ぐのが酸化被膜(油膜)と、使用後の水分除去です。
・使用後は空焼き(120℃以上で水分を完全除去)し、保管前に薄く油を塗布します。(酸素遮断、特に湿度の高い季節)
・定期的に再シーズニングを行い、不活性炭素膜で保護します。
・サビが出た場合は金属たわしで落とし、再シーズニングを行います。
面倒なので使用後は水をさしてそのまま沸かすとときれいになるし、空焼きまでスムーズです。
ササラは通っぽくてかっこいいのですが、中華鍋と違うのですみっこが落としにくいです。
そろそろECサイト、見てませんか?
いいと思いますよ。
個人的には安いフライパンをマメに替えるか、こちらを手にするのがオススメです。
■ まとめ
万人向けとは言えません。
しかし、調理道具を「使い捨て」ではなく「育てる・磨く・長く使う」という思想で捉える方には、これほど魅力的なツールはないでしょう。
工業製品としての完成度、調理器具としての合理性と耐久性、道具との対話から生まれる調理精度――これらを体現できる、数少ない道具です。
科学的には”調理器具”ではなく”熱制御装置”ですし、野外ではクマよけにもなります。
どうやら100年使えるらしいので、遺産相続のリストに加える予定です。
S.G
■ 参考までに


